ドクター紹介&ブログ

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横浜院院長 柴田 貴志

横浜院院長 柴田 貴志 ドクター

ボトックスについて

2018年04月20日

 「このしわが気になるのでボトックスで治してください」

 

 美容外科で働いているとこのように患者様から言われることも多いです。

 

 しかし、ボトックスがすべてのしわに効果があるわけではありません。

 

 美容外科でかなりの頻度で使われているボトックスですが、一体どのような薬なのでしょうか。

 

 

ボトックスって何?

 そもそもボトックスは商品名であり、薬の成分の正式名称ではありません。正式にはボツリヌストキシン(以下BT)といいます。

 

 ボトックスは米アラガン社が発売しているBTの商品名であり、他のメーカーのBTをボトックスとして宣伝出来ません。

 

 例えるならロマネコンティ(ボトックス)はワイン(BT)の一種で有名ですが、他のワインをロマネコンティの名前を使って売ってはいけないという感じでしょうか。

 

 ではボツリヌストキシンとは何か、実はボツリヌス菌という細菌が持つ毒素を分離したものです。

 

 BTはA~Gの7つの型に分けられていて、治療に用いられるのは主に効果の強いA型です。B型の商品もありますが、あまり主流ではありません。

 

 赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけない理由がこのボツリヌス菌です。はちみつ以外にもからしレンコンやいずしなどにも含まれていることがあり、ボツリヌス菌を摂取し死亡する例も報告されています。

 

 

 

BTは安全??

 「そんな危ない毒素を体にいれるなんて!!」と思われるかもしれませんが、むしろ非常に安全な薬です。理由としては

①菌を直接入れるわけではない

②濃度が非常に低い

③経口や吸入ではなく筋肉注射のため全身への作用が少ない

 

 日本の厚生労働省からも安全性について認可され、眉間・目尻などの表情じわ以外にも、痙性斜頸、眼瞼痙攣、下肢上肢痙縮、顔面痙攣、腋窩多汗症などに適応が認められています。

 

 また、BTの副作用で最も頻度が高いものは眼瞼下垂、頭痛で1~5%程度です。

 

 これは眉間や額に注入した場合、もともと眉を挙げる癖がある方は上げづらくなるため目が開きにくい状態(眼瞼下垂)となり、無理に開けようとして神経が必要以上に賦活され頭痛が起こると考えられます。

 

 大きな副作用としては、アナフィラキシーショック、角膜障害、嚥下障害、痙攣発作などが記載されています。

 

 この中で最も重篤なものはアナフィラキシーショックで死亡する可能性もありますが、これはほぼすべての薬に記載されています。私が論文を調べた限りでは2017年に世界で初めて報告された1例のみでした。

 

 上記の重い副作用はどれも確率が記載されていないほどごくわずかなことに加え、嚥下障害は痙性斜頸がある方の首の筋肉に注入した時に起こるものです。

 

 注入部位や量を間違えなければ、薬の成分による副作用はほとんどなく安全性はむしろ非常に高い部類に入ります。

 

 ちなみにBTは注入量を何ccではなく何単位で表します。これは、注入する前にBTの入っている瓶に生理食塩水を注入し希釈してから用いるため、その希釈する水の量によって濃度が変わってしまうからです。

 

 つまり、眉間に10単位打った場合でも、あるクリニックでは0.5cc、あるクリニックでは1ccなどばらつきが出てしまうため、あくまで有効成分であるBTを何単位打ったかで表します。

 

 ちなみにこの単位、どうやって決まっているかといいますと、ボトックスの添付文書ではマウス腹腔内投与LD50値となっています。

 

 LD50、恐らくほとんどの方が聞いたことがない単語かと思います。lethal dose 50%の略で、簡単に言うとある生物が50%死ぬ量です。

 

 なぜこんな恐ろしい指標が存在するかというと、「毒にも薬にもなる」といわれるように、どのような薬でも量が多ければ副作用で死亡することもあります。

 

 そこで、薬をどこまで量を増やしても大丈夫かを調べるためにLD50は使われます。人で調べるわけにはいかないので基本的にはマウスやラットなどのLD50が用いられます。

 

 ボトックスの単位を示すマウス腹腔内投与LD50値は、マウスのおなかに注射した時に50%のマウスが死んでしまう量=1単位ということです。

 

 しかしこの1単位、具体的な数値としては記載はありません。では人間においてどの程度まで安全なのか計算してみましょう。

 

 マウスの致死量は1/30億g/kgとされています。マウスは体重が20gほどなので、マウスの致死量は1/1500億gとなります。

 

 このマウスの致死量とLD50がほぼ同じとすると1単位≒1/1500億gとなります。

 

 一方、人の致死量は経口摂取で1~2ng/kgとされています。つまり50㎏の人間なら50~100ng=0.5~1/1000万gが致死量です。BT1gで1000万人が死ぬと言われていますのでこの数字と矛盾はありません。

 

 ここから計算すると、人の致死量=7500~15000単位となります。

 

 通常眉間には10~15単位ほどなので致死量の1/1000程度です。

 

 しかも臓器に影響を及ぼす腹腔内投与ではなく皮内or筋中であるため臓器に影響はない上に緩徐に吸収されるため全身に対する影響ははるかに小さいです。

 

 「1/1000って意外と多いじゃないか!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。日常的に飲んでいるカフェインと比較してみます。

 

 カフェインの致死量は3gと言われています。これは、コーヒー75杯分です。つまり致死量で比較するとBT眉間1回=コーヒー0.075杯分ということです。コーヒーって怖いですね。

 

 

 

 

ボトックスの薬理作用

 ここからはBTがどのような作用でしわに効くのか、解説いたします。

 

 BTは直接しわを引っ張って伸ばすわけではなく、筋肉の動きを抑えることで表情じわと呼ばれるしわが出来るのを防ぎます。

 

 筋肉が動くためには、まず脳から「どこどこの筋肉よ動け」という命令が神経を伝って筋肉へ向かいます。

 

 神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)まで命令が来ると、神経終末部にためられているアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。

 放出されたアセチルコリンは筋肉にあるアセチルコリン受容体というたんぱく質に結合します。

 アセチルコリンが鍵、受容体がカギ穴のようなもので、普通のカギと鍵穴の関係と同様に物質とそれに対応する受容体は1対1で対応しています。

 

 受容体にアセチルコリンが結合すると、その刺激により筋肉が収縮します。

 

 筋肉が収縮することにより、表面の皮膚が押しつぶされ、表情じわが現れます。

 

 BTを注入すると、筋肉と神経のつなぎ目(神経筋接合部)にある神経終末部にBTが取り込まれます。

 

 すると、神経終末部から放出されるはずのアセチルコリンが放出されなくなります。

 

 アセチルコリンが放出されないと脳から神経を伝ってきた「筋肉よ縮め」という命令が途絶え、筋肉は収縮することが出来なくなります。

 

 つまり、厳密にいうと脳から神経を伝わって届けられる命令をストップしてしまうのがBTの働きです。

 

 しかしこの効果は永続するわけではなく、残念ながら4~6か月ほどで効果は切れてきてしまいます。

 

 そのため、定期的に注入して頂くことで表情じわが刻まれてしまうことを防ぐ効果もございます。

 

 

 

BTの様々な効果

 BTは打ち方や打つ場所によって表情じわ以外にも様々な効果が得られます。

 

筋減量効果

 BTを大きな筋肉に打つと、徐々に筋肉が痩せボリュームが減ります。

 筋肉はそもそも存在するだけで常にエネルギーを使います。しかし人体は効率重視の設計になっています。

 維持するためのエネルギーがもったいないため、使わない筋肉は分解してエネルギーに変換&維持費の節約をします。これによりBTで動かなくなった筋肉は徐々にボリュームが減っていきます。

 これはエラ(咬筋)、ふくらはぎ(腓腹筋)、首の付け根(僧帽筋)に用いられます。

 注入後1週間ほどで注入箇所に動かしにくさを多少感じますが、筋肉のボリュームは1~2か月ほどかけて徐々に減っていきます。

 

肩こり改善効果

 肩こりの原因は背中から首にかけてある僧帽筋の使いすぎです。ここに注入することで、筋肉の収縮を抑えることで肩こりを改善します。

 また、上記のように筋肉のボリュームも減るため首から肩にかけてのラインがすっきりします。

 ただ、今まで使っていた筋肉が使えなくなるため他の筋肉を使い、そこにこりが現れる方も希にいらっしゃいます。

 

皮脂の分泌抑制

 通称マイクロボトックスと呼ばれる方法で、BTを肌の浅い層に注入すると、毛穴の奥にある皮脂腺という皮脂を分泌する組織に作用します。これによりお顔の皮脂の分泌を抑えることが出来ます。

 

美肌効果

 BTを肌の浅い層に注入することで、毛穴を引き締める効果があります。これによりきめの細かいつるっとした肌になります。

 

リフトアップ効果

 お顔には様々な筋肉があり相互に作用しています。その中の下制筋と呼ばれる下方向へ引っ張る筋肉にBTを注入することで、下へ引く力を弱めリフトアップ効果が得られます。

 

汗抑制効果

 汗腺と呼ばれる器官に汗を出せという神経刺激が伝わることで汗が出てきます。BTを注入することで、汗腺への神経刺激をブロックし汗の分泌を抑えます。

 主に腋に打つことが多いですが、掌や足底に打つことも可能です。

 

花粉症改善効果

 鼻にBTを流し込み浸潤させることで、花粉症の症状を抑えることが出来ます。

 

 

BTの適応箇所

 BTはどこにでも打てるわけではありません。場所によっては表情がなくなってしまうなどのトラブルが起こってしまいます。

 

 ここからはBTの適応箇所、それぞれのデメリットなどを記載します。

 

 額には眉毛を挙げる前頭筋という筋肉があります。ここが動くと額に横じわが入ってしまいます。

 BTを打つことで普段の会話時などの表情に伴って出来る額のしわを防ぎます。

 合併症として起こりえることが2つ、人によっては眉が下がってしまうことがあること、もう一つは逆に眉が挙がってしまうことです。

 なぜ逆のことが起こるのでしょう?

 

眉が下がってしまう理由

 上まぶたのたるみが多い方、眼瞼下垂で目の開きが悪い方は開眼を補助するために眉を挙げる癖がついています。

 先ほど書いたように、額の前頭筋は眉を挙げる筋肉です。そのような方に不用意にBTを眉に近い位置に打つと、普段通りに眉が挙げられなくなる、つまり普段より下がってしまいます。

 眉が下がることに伴い二重幅が狭くなる、目つきが悪くなる、頭痛がするなどの合併症が起こってしまいます。

 

眉が上がってしまう理由

 次に眉が挙がってしまう場合ですが、これはスポックブロー顔貌、メフィストサインなどと呼ばれる合併症です。

 スポックというのはスタートレックというアメリカのドラマ作品のスポック船長というおかっぱ頭、とがった耳に加え釣り挙がった眉が特徴のキャラクターです。つまりスポックの眉毛みたいな顔立ちということです。

 また、メフィストはファウスト伝に出てくる悪魔の一種メフィストフェレスのことです。特に決まった姿かたちがあるわけではないですが、釣り挙がった眉が特徴で描かれることが多いです。

 つまり眉の外側が釣り挙がった状態を指すのですが、これはBTを打つ位置とその患者様の状態によって起こりえます。

 もともと眉を挙げる癖が強い方に額の真ん中付近だけ打つと、眉を挙げようとする癖は残っていますが真ん中は上がらず外側だけ上がってしまうため釣り挙がった眉になってしまいます。

 これは額の外側にも注入することで防ぐことはできますが、あまり打ちすぎると外側は眉が下がりやすいため注意が必要です。

 

 

眉間

 会話中や考え中についつい眉間にしわが寄ってしまう方も多いと思います。

 こちらも人によっては少し眉が下がってしまうこと、もう一つは逆に眉が挙がってしまうことがあります。

 眉間のしわは眉毛を動かす雛眉筋という筋肉が動くことで現れます。BTをここに打つのですが、あまり下に打つと目回りの筋肉にまでBTの効果が出てしまうため少し上目に注入します。

 この時、BTが広がり前頭筋にも少し効いてしまうと、眉が下がってしまうのです。

 また、眉間部だけに注入すると、眉間にしわを寄せる癖は残っているのによせれない→より強く動かすことでBTが効いていない外側だけ動いて上がってしまうことがございます。

 これを起こさないよう、当院では雛眉筋全体に注入いたします。

 

 

目尻、目の下

 通称カラスの足と呼ばれるしわです。笑った時に目尻や目の下に出来るしわを改善します。

 注意点としては目の下の内側のしわを改善しようとしてBTを打つと、目が閉じにくい、鼻涙管と呼ばれる涙を鼻へ流す管がうまく機能しなくなり涙が出てしまうなどの合併症が起こりますのでお勧めしません。

 また、あまり多く打つと表情が硬い印象となることもあります。

 

 

鼻根・鼻背

 鼻根部の横じわ、鼻背部のバニーラインと呼ばれる斜めのしわに効果があります。

 

 

小鼻

 小鼻に打つことで鼻の穴を広げる筋肉をブロックします。少しだけ小鼻が小さくなります。

 

 

エラ

 咬筋と呼ばれる噛んだ時に張り出すエラの筋肉に注入します。顎関節症や歯ぎしりの改善、エラの筋肉を減らし小顔効果などがございます。

 繰り返し注入して頂くことで、徐々に筋肉のボリュームが戻りにくくなり効果が持続しやすくなります。

 注意点としては、あまり前方に打つと頬の筋肉にまで効いてしまい表情がおかしくなってしまうこと、上の方まで打つとこけて見えてしまう方もいますのでご注意ください。

 当院では患者様の咬筋や頬骨の高さなどを見て打つ量、位置を相談させていただきます。

 

 

口上

 口をすぼめた時に唇の上に出来るしわを改善します。強く打ちすぎると飲み物を飲むときに支障が出るため軽めに注入します。

 

 

口角

 口角から外側下に走る口角下制筋という口角を下へ引っ張る筋肉へ注入します。すると、今まで口角を下に引っ張っていた筋肉が緩むため、口角が上がります。

 もともとどの程度下制筋が使われていたかによって効果に個人差があります。

 

 

 顎にできる梅干しじわに効果があります。下唇の裏側に食べ物がたまりやすくなることがあります。

 また、口を閉じるときに常にこのしわが出る方の場合、力が入りにくくなり口が閉じにくくなることもあります。

 

 

 背中から首筋にかけて走る僧帽筋にBTを打つことで、肩こりの解消、筋肉を減らし首筋のラインを整えます。

 ただ、今まで使っていた筋肉が使えなくなるため他の筋肉を使い、そこにこりが現れる方も希にいらっしゃいます。

 

 

腋・手掌・足底

 浅い層に注入することで、汗を分泌する汗腺をブロックし、発汗を抑えます。

 注意点としては、腋もそうですが、特に手足はかなり痛みが強いのでご注意ください。

 

 

ふくらはぎ

 ししゃも足と呼ばれるふくらはぎの筋肉が張った状態を改善し女性らしい細い脚になります。

 

 

マイクロボトックス

 皮膚の浅い層に細かく注入する方法です。主に顔、首に用いられますが、毛穴を引き締め皮脂の分泌を抑えることでハリのある肌になります。

 ただ、細かく注入するため小さな内出血がぽつぽつと出やすいです。

 

 

鼻腔

 鼻腔内へ流し込み浸透させることで、花粉症の症状を抑えることが出来ます。

 

 

 

終わりに

 BTは人によって適応、効果は変わってきます。非常に有用ですが、万能ではありません。

 

 BTを打つときは、クリニックのドクターとよく相談し、本当に自分の悩みが解消されるのか、本当に自分に合っているのかを確認したうえでお受けください。

 

 

 

 

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