ドクター紹介&ブログ

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副院長 柴田 貴志

副院長 柴田 貴志 ドクター

形成外科について

2017年10月09日

形成外科とは

よく美容外科医が「形成外科出身です!」とアピールしていますが、そもそも形成外科とはどんな科でしょうか?

 

形成外科は一般的にはあまり知られていない科ですが、日本形成外科学会では以下のように説明されています。

 

 ”形成外科とは、身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、みなさまの生活の質 “Quality of Life” の向上に貢献する、外科系の専門領域です。”

出典 http://www.jsprs.or.jp/general/

 

 

また、昭和大学形成外科初代教授、鬼塚先生は以下のように説明しています。

 

 ”形成外科とは先天性および後天性の身体外表のかたち、色の変化、すなわち醜状を対象とし、これを外科的手技により解剖学的に正常(美形)にすることを手段とし、その目的は個人を社会に適応させるものである。”

 

 

難しい表現が使われていますが、簡単に言えば見た目を治す科です。

 

古くは紀元前に囚人に対する刑罰で鼻をそぐものがありましたが、これを治す手術が形成外科の始まりと言われています。

 

そこから長らく形成外科の発展はありませんですが、近代の戦争における兵器の殺傷力向上により、爆発などにより体の一部が欠損する兵士が増え、失った部分を治そうとして形成外科が急速に発展しました。

 

1955年にはストックホルムで世界初の形成外科学会が主催され、これを受けて1956年には東京大学付属病院内において形成外科学会の前身となる形成外科研究会が発足しました。

 

ここからしばらくはあくまで分野のひとつとされていましたが、1972年に日本医学会より科の一つとして認められ、1975年には医療法で一般標榜科として正式に認められました。

 

つまり日本ではまだ60年ほどの新しい科なのです。

 

 

形成外科の手術

身近なところでいえばほくろなどの皮膚腫瘍、熱傷、外傷、褥瘡、顔面骨骨折、なじみが薄いところでは多指症や口唇口蓋裂などの先天奇形、乳がんなどの悪性腫瘍を切除した後に、組織が足りなくなった部分の再建(作り直すこと)なども行っています。

 

形成外科は小さい手術では10分ほどで終わるものから大きな手術では20時間を超えるものもあります。大きな手術の一つが再建手術です。

 

例えば乳がんで皮膚も乳腺も大きく切除してしまった場合、皮膚が足りないため傷が閉じないし組織量も足りません。そこで他の部位から自分の組織である皮弁(皮膚、脂肪、筋肉、骨、腸管などなどの複合組織)を持ってきて埋め合わせをする手術が再建手術です。

 

「なんだ、じゃあお腹の余ってる肉と皮膚を胸に張り付ければいいだけじゃん」とはいきません。人間の組織は血液を介して酸素や栄養を受け取り生きているため、ただ単純に組織を持ってきただけでは腐ってしまいます。

 

その解決策として、古くは有茎皮弁、最近では遊離皮弁と呼ばれる手術が行われます。

 

有茎皮弁は、血管をつないだまま皮弁を移動すれば血流が保たれるという考えに基づいたもので、比較的太い血管を使いますし、血管もそのままなので安全性の高い手術です。

 

しかし、有茎皮弁は血管を切らずに移動するため、皮弁の形や採取できる位置は限られていますし、移動できる範囲も限られているので万能ではありませんでした。

 

ならば血管切っちゃえば自由に動かせるじゃん、というのが遊離皮弁です。ただ血管を切ってしまうと血流がなくなってしまうため、移動先の血管につなぎ合わせる必要があります。つなぐ血管は太くても2,3㎜、最近では特に細い血管も選択されるため0.5㎜ほどのものもあり、顕微鏡で見ながらの手術となります。

 

こちらは自由度が高い代わりに血管をつなぐため、術後血管が詰まったりなどのトラブルのリスクが上がります。

 

術後1~2週間は予断を許さない手術のため、術者としては毎日がひやひやです。詰まってしまった場合、すぐに再手術で血管をつなぎなおしますが、最悪皮弁自体がだめになってしまいもう一度別の遊離皮弁を行うこともたまにあります。

 

形成外科時代はこの遊離皮弁に何度か悩まされました。

 

 

形成外科医として

私は形成外科では皮膚腫瘍、熱傷、顔面骨骨折などスタンダードなものから、顕微鏡を用いて血管吻合をする切断指再接着、遊離皮弁による再建なども行っていました。

 

その中でも特にsuper micro surgeryと呼ばれる特殊な手術をメインで行っていました。super micro surgeryは簡単に言えば、顕微鏡を用い、特に細い血管などをつなぐ手術です。主に婦人科悪性腫瘍(卵巣がんなど)切除後に起こるリンパ浮腫(簡単に言うとひどいむくみです)に対して、リンパ管を静脈につないでたまっているリンパ液を流して浮腫を改善するリンパ管静脈吻合という特殊な治療などで用います。

 

通常形成外科で顕微鏡を用いて吻合する血管は1~3mmほどが多いですが、リンパ管は太くても1mm未満、細いものでは0.3mmほどのため、針や糸はもちろん、針をつかむ持針器や鑷子(ピンセット)もすべて専用のものを使います。

 

この技術を美容外科に使うのか?といえば正直使いません。

 

「このsuper micro surgeryを使って最高の仕上がりを約束します!」といった売り文句を言う医師もいるかもしれませんが、そもそも美容外科で血管やリンパ管をつなぐ手術はありませんし、顕微鏡レベルの調整をしても見た目にはほぼ変化はありません。

 

しかし、細かなデザインの調整、ダウンタイムの軽減、scar less(傷が少ない)な手術を行う上で、super micro surgeryで培った0.15mm間隔で縫合する微細な手技が基礎にあることは、美容外科を本格的に始めてから大きなアドバンテージであると感じました。

 

 

また、形成外科において一人ではこなせない症例数を経験することが出来たことも大きな糧となっています。

 

形成外科ではカンファレンスと呼ばれる症例検討会を週に1回、3時間ほどかけて行っていました。カンファレンスではその1週間で診察した全ての患者様の術前、術中、術後の写真を見ながらここはこうしよう、この患者様には次にこの術式はどうだろうなどの検討を行っていました。

 

内科だろうが外科だろうが関係なく、予期せぬ落とし穴、つまり合併症などのトラブルはたくさんあります。しかしその落とし穴の中には本には書いていないものも多く、自分で痛い目にあって初めて気付くものです。

 

通常の外来や手術では自分一人で対応できる患者数は限られています。しかし、自分の症例はもちろん、他の医師の症例も外来、手術含めてカンファレンスで検討することで、自分一人では経験しえない数の症例を経験し、他の医師の失敗からも多くを学ぶことが出来ました。

 

手技はもちろん、カンファレンスでどんなところに落とし穴があるのかを他の医師の症例から多く学べたことが、手術を行う時に合併症を減らしより安全に行うことにつながっています。

 

 

最後に

形成外科と美容外科は似て非なる科です。形成外科をやっていた医師がそのまま美容外科でも良い医者になるかといえば全く違います。

 

しかし、私にとって形成外科を学んだことは美容外科を行う上で非常に糧になっていると感じています。

 

この経験を無駄にせず、患者様にいい医療を提供出来るよう日々精進していきます🙏

 

 

 

 

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